【Lakes Analytics vol.1】激守速攻!データにも表れた滋賀レイクスのスタイル

滋賀レイクスターズ

 滋賀レイクスでは2022-23シーズン、データスタジアム株式会社のアナリストによる、データに着目をしたコラムをシーズンを通して定期連載していきます。 第一回目はルイス・ギルHC体制最初のシーズンとなった2021-22シーズンをスタッツをもとに振り返り、滋賀レイクスのバスケットボールを紐解きます。

2021-22シーズンのスタッツから見えるレイクスの進化と課題

 滋賀レイクスは2024年に予定されている新基準でのB1入会審査に向けて3ヵ年計画を打ち立てており、2021-22シーズンはこの計画の1年目として位置づけられたシーズンとなった。クラブが定めたチームフィロソフィーに基づくチーム作りを進めるため、スペインで豊富な指導経験を持ち、代表チームのアシスタントコーチとして世界一も知るルイス・ギルをHCとして招聘。ロスターも大幅に入れ替えて臨んだシーズンは、勝率こそ14勝43敗の.246と苦しんだものの、同時にチームに大きな変革がもたらされた1年でもあった。
 
 本コラムでは、2020-21シーズンと2021-22シーズンのチームスタッツを比較することで、昨季のレイクスにどんな変化が見られたのかを明らかにし、さらに今季に向けての課題や注目選手も紹介していく。
 まずはチームの変化について、ギルHCがチーム戦術のコンセプトとして試合後の記者会見などで何度も繰り返し強調していた「ハードディフェンスからのファストブレイク」「ボールシェアからのオープンショット」の2点を中心に見ていきたい。

ハードディフェンスからのファストブレイク

 昨季のレイクスのチームスタッツの中で最も際立っていたのは、「ファストブレイクポイント」(速攻での得点)の増加だ。
 20-21シーズンは1試合平均7.7点でリーグ17位だったのに対し、21-22シーズンは15.4点と倍増し、一気にリーグ1位に急浮上した。1シーズンの間でファストブレイクポイントがここまで増加したチームは過去に例がなく、ギルHCが志す「ファストブレイク」は間違いなくチームに浸透したと言えるだろう。
 さらに、1試合での攻撃機会数を測る指標である「Pace」という数字で見ても、レイクスは昨季リーグ1位の数字となっている。この数字が高い程、ハイペースでアップテンポなバスケを展開していることになり、昨季のレイクスはリーグで最も速いオフェンスを仕掛けていたことが分かる。
 また、チームのスティール数が20-21シーズンの1試合平均6.1から21-22シーズンは7.0に増え、リーグ順位も13位→9位に上昇。ハードなディフェンスで相手からボールを奪い取るケースが増えており、この点もギルHCが唱える「ハードディフェンス」を体現していると言えそうだ。


 スティールでボールを奪った直後は試合が止まらず、そのまま速攻に転じる大きなチャンスとなる。ハードなディフェンス→スティールが増加→速攻の機会が増加→ファストブレイクポイントが増加、という好ディフェンスから速いオフェンスにつなげる好循環が生まれていた。

ボールシェアからのオープンショット

 ギルHCはハーフコートオフェンスにおいてはボールをシェアし、オープンショットを作り出すことを重視している。それが表れていたのが、アシスト数の増加で、21-22シーズンのレイクスの1試合平均アシスト数は20.2。20-21シーズンの18.6から増加している。
 アシスト数はペースアップにより、オフェンス回数が増えることで増加するケースもあるが、成功したシュートにアシストが記録される割合を示す指標であるAST%を見ても、21-22シーズンは20-21シーズンよりも上昇している。
 このことから、昨季のレイクスのアシスト数増加はペースが速くなったことだけではなく、チーム全体でボールをシェアし、オープンショットを作り出す意識が徹底されたことによるものと言えるだろう。


 3ヵ年計画の1年目ではギルHCのフィロソフィーやストラクチャーを浸透させることを重視してきたが、以上のデータから、この点については一定の成果を上げることが出来たと考えられる。

昨季見えた課題

 一方、課題として見えたこともある。ディフェンス面では1試合の平均失点が90.6点でリーグ22チーム中ワーストとなってしまった。相手のFG成功率はワースト2位の49.5%、特に苦しんだのがインサイドでのディフェンス。相手のペイントエリア内でのシュート成功率が61.1%でリーグワーストとなっており、インサイドでのシュートを高確率で決められたことが、失点が増えた大きな要因と言える。
 相手にシュートを決められてしまうと、スローインから試合再開となり、速攻を出すことが難しく、速いオフェンスにもつながらない。今季はハードなディフェンスでスティールを奪うだけでなく、相手のシュートを落とさせ、成功率を下げることにも注力したいところだ。

 昨季はリバウンドでも苦戦が見られた。相手のシュートが外れた後、ディフェンスリバウンドを確保できた確率は68.1%でリーグワースト3位。およそ3回に1回は相手にオフェンスリバウンドを取られていたことになる。ディフェンスリバウンド後は速攻を狙うチャンスとなるため、ディフェンスリバウンドをしっかり取り切ることは速攻を増やすためにも重要となる。


 オフェンス面では、速攻からのイージーシュートが増えたことで、2P成功率はリーグ8位とかなり高い数字となった一方、3P成功率33.2%はリーグで3番目に低い数字だった。速攻からのレイアップが出せている試合では問題にならないかもしれないが、ハーフコート中心の展開においては、3Pの確率はより重要になってくる。ボールシェアでオープンな状況での3Pを作り出し、これをしっかり沈めて3P成功率を高めていきたいところだ。

今季の注目選手

 最後に今季注目の選手を紹介しよう。3ヵ年計画の2年目となる今季は、ギルHCのスタイルの完成度をより高めるため、昨季の中心選手を残しながら、随所で適切な補強を行っている。

 昨季から残留した選手の中で注目したいのが、#15 キーファー・ラベナだ。

#15 キーファー・ラベナ

 フィリピン代表でも司令塔として活躍するラベナ選手は、レイクス加入1年目からギルHCのスタイルに完璧にフィットしてみせた。平均アシスト数5.9はリーグ3位、平均スティール数1.5もリーグ3位、さらにファストブレイクポイントも1試合平均3.5点を記録し、これはポジションがPGの選手の中ではリーグ1位の数字。ボールシェア、ハードディフェンス、ファストブレイクといったギルHCのフィロソフィーを見事に体現したと言えるだろう。今季はゲームキャプテンを務めることも発表されたが、2年目もチームに不可欠な存在となることは間違いない。

 新加入選手で注目したいのは#32 狩野祐介。16-17~19-20シーズンまでをレイクスでプレーし、今季は3シーズンぶりの復帰となる。名古屋Dでプレーした20-21、21-22シーズンには2シーズン連続でベスト3Pシュート成功率賞を受賞しており、レイクス時代からさらにシュート精度を高めている。昨季のレイクスは3P成功率が課題だっただけに、リーグ屈指のシューターの帰還は非常に大きい。チームの3P成功率向上に加え、狩野選手にディフェンスが引き付けられれば、インサイドにより広いスペースが生まれるため、2P成功率にも相乗効果が期待できそうだ。

ルイス・ギルHC 体制2年目のレイクスに注目

 ここまで見てきた通り、新体制1年目の昨季はギルHCのバスケットボールを着実に浸透させた一方で、様々な課題も見えてきた。2年目の今季、さらに高い勝率を残すためにも、ギルHCのスタイルを継続しつつ、昨季の課題を解消していくことが求められる。ギルHCのスタイルを熟知する継続メンバーと、新たに加わった強力なメンバーがチームをどのように進化させていくのか?

 3カ年計画2年目を迎える滋賀レイクスに注目だ。

(文:データスタジアム株式会社 バスケットボールアナリスト 柳鳥亮)

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